うにたこの深海日記

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ひまつぶしの場所に深海はいかが?好きなものを垂れ流すブログ。あなたの好きといくつ繋がれるかな?

ビジネスシーンとエンタメシーンにおける最適解のギャップ

バーチャル界隈の高度成長がある程度落ち着き、安定成長の時代に突入しました。決して衰退期には入ってないと思います。受け売りですが、ブームが去って文化として定着する段階に到達したという解釈が一番的を得ているんじゃないかなと個人的には思いますね。

さてそんなバーチャル界隈ですが、この一年で企業の参入が目立つようになったなと感じております。実はここ、Youtuberとは発展の流れが少し異なるんですね。既存のYoutuberは個人で活動を開始し、後に発足する企業(事務所)への所属という流れで発展してきました。

対してバーチャルの分野では企業が界隈に参入するというケースが多く見られます。つまり、

Youtuber

界隈→企業

バーチャルタレント

企業→界隈

という、ある種逆の流れで市場が大きくなっていったのです。(もちろん個人でバーチャル活動を行っている方もいらっしゃいます。)

なぜこうなったかの主な要因として考えられるのは「参入ハードルの高さ」です。バーチャルを経由する場合、キャプチャー等の設備、モデリング技術など多額の費用と高度な技術が求められます。これを個人で揃えるというのはなかなか難しいものです。また、環境が整っていても肝心な「配信者としての魅力・能力」が備わっていなければ生き残りは難しいでしょう。故に、配信者としての素質を持つ人を企業が設備面でサポートするという図式ができあがるのです。これがバーチャル界隈に企業からの参入が増えた理由ですね。今や大手企業が公式バーチャルタレントを推し進めるまでになりました(サントリーの公式Vtuber「燦鳥ノム」さん。かわいい)。これから大手企業によるバーチャル参入は少しずつ増えると思われます。

 

さて前置きが長くなりましたが、企業が軸となることで生まれる諸問題について少し考えていきたいなと思います。

企業が企画・運営するということは、その時点でそれは「ビジネス」なのです。ビジネスにおいて大事なことというのはビジネスの分野によって大きく変わってはきますが、共通して押さえておくべきポイントも存在します。それは、「情報管理」「リスク管理」「資金調達」の3点です。

「情報管理」と「資金調達」は言わずもがなですね。自分らが何しているのか分かってないと企画が回らないし、そもそもお金がないとプロジェクトの存続が不可能ですからね。

さて、問題はリスク管理です。そもそもリスクとは何か?簡潔に言えば「外的要因によってもたらされる損失」と言えましょう。ことバーチャル界はタレント業の派生なので、人間の悪意に晒される機会というのが他のビジネスよりも多いわけです。ここにおけるリスク管理は、そういった危険人物からタレントを守るという意味合いを含んでいます。

具体的にどうリスクを回避するかですが、主な方法としてタレントとファンの接触に制限をかけるというものが挙げられます。タレントとファンの間に企業というフィルターを掛ければ、危険分子をある程度事前にシャットアウトすることができます。

ですが、この管理をどこまでの深度で行うかが難しいのです。あまり管理が強すぎるとファンは運営に対して嫌悪感を抱いてしまうケースがあります。ここがジレンマで、ビジネスの観点では良い選択でもエンタメの観点で見れば必ずしもそうとは限りません。エンタメシーンにおいて企業がファンに提供するものは何か。簡潔に言えばそれは「印象」です。「可愛い」「かっこいい」「応援したくなる」といった印象が提供されることで推しという概念が生まれます。

ビジネスの効率追求がエンタメにおける印象と必ずしも比例しないのは難しいところです。ましてやバーチャル界隈というのはファンの声が直接届くこともあって既存のタレント業よりも距離が物凄く近いんです。そういう意味で新人さんなんてのは本当に危険と隣り合わせなのです。だから企業はそういう所から守るためにしっかり管理をしていかなくてはならないのです。そしてなぜそういう管理を行うことにしたのかの過程をしっかりとファンに伝えていかなくてはいけないですね。

 

余談になりますが、なぜバーチャル界隈はここまで「運営」という存在に敏感になっているのでしょうか。それはバーチャル界隈における企業のやらかしの多発が原因だと私は考えています。やらかしというのは、まあ簡潔に言えばタレント自身を蔑ろにした対応が露呈して炎上、ということですね。

もちろん企業の認識の甘さ(この場合そもそもビジネスを舐めすぎなだけですが…)も原因ですが、バーチャルタレントという概念自体がまだしっかりと定義されていないという点も考慮すべきかなと私は思います。

しかし、私はそう難しいことではないと考えています。言うなれば、アバターと魂が一心同体になっているわけで、現実世界でもそういう例はあります。デーモン閣下っていますよね。あの悪魔界の王にして10万56歳というのはいわば「アバター」なわけです。でも、デーモン閣下を「悪魔界の王だから」「10万56歳だから」という理由で推している人はそういないですよね?皆デーモン閣下の歌声や人間性に惹かれて、そのうえでキャラ付けに惹かれているのです。そりゃ誰だってデーモン閣下がいきなり同じメイクをした別人になってたら「は?」ってなるわけですよ。

バーチャルだって同じです。バーチャルは仮想であっても空想ではないのです。ファンも企業も、バーチャルタレントが同じ「人間」であることを忘れてはいけませんね。